働き盛りで、職場でも家庭でも責任が増しているけれどどうも調子が悪い、心身が思うようにならないということはありませんか?
その辛さを感じているのは、あなただけではないかもしれません。
更年期障害に悩まされるのは実は女性だけではありません。男性にも更年期は起こりうるのです。
本記事では、「中年期における心身とホルモンの関係」「男性の更年期障害に関する症状や改善点」を考え、中年期特有の変化に向き合い乗り越えていく方法を解説します。
それらの問題を理解することで、この時期を上手に乗り切りましょう。
誰もが経験する中年期特有の悩み
中年期とは何歳からの事を指すのか、疑問に思ったことはありませんか?実は、何歳から中年とするかにはいろんな説があります。
中年期と言われる年齢は35歳~64歳、あるいは40歳~64歳とも言われています。
どちらにしても、中年期は体や生活環境が変化する時期なので、生活スタイルを変える必要があったり、アイデンティティが揺らいだりする時期でもあります。
例えば仕事面では、中年期の始めの頃は職務の範囲が広がり、後輩や部下に対して指導的な立場に立たされることで責任感という重圧を重く感じる時期です。
その後、そのままキャリアを重ねてより大きな責任を負っていく人もいれば、キャリアチェンジをする人もいるなど、
自分の目標を定めたり変えたりするきっかけがもたらされるのが中年期の時期でしょう。
身体面でも、10代や20代の頃のように体力的な無理が効かなくなってくる年齢であり、健康診断の結果が気になったりと、
体型や肌の状態など外見も若い頃とは変わってきたりするでしょう。
私生活においても、老いていく親の健康問題や介護など関係性の変化や経済的問題、子どもの成長に伴う親子関係や夫婦関係の変化、
自分たちの老後への準備など、心配の種が尽きない時期でもあります。
中年期の心理的特徴
中年期は、自分はまだ、「若い」という感覚から、身体的衰えを感じ始める事で「老化」を自覚し始める時期にもなります。
中年期には、社会生活や家庭生活・自分の内面や外面の変化によって生まれる戸惑いや葛藤などの心理的ストレスに対処しなくてはならない時期です。
例えば、深層心理を分析し、「集合的無意識」などの概念を唱えた精神科医であり心理学者でもあったカール・G・ユング博士は、40歳を「人生の正午」
そこから始まる中年期を「人生の午後」と呼び、中年期への過渡期を人生最大の危機だと捉えました。
ユング博士は、上昇・進展などの「午前」(青年期)に持っていた価値観を「正午」頃に転換し、以降は人生の終末を意識することで「人生の午後」が充実すると考えたのです。
また他の心理学者、ダニエル・J・レビンソン博士は人生を大きく4つのステージに分け、
各ライフステージに特有の問題が発生し、職業・家庭・精神生活の各局面で難問がふりかかると考えました。
40歳から45歳を人生半ばの過渡期と呼び、この時期に約8割の人が「自分の人生はこれでよかったのだろうか」と疑問を抱き、恐れや怒りを感じると唱えたのです。
中年期とホルモンの関係
加齢とともに男性ホルモンや成長ホルモンの分泌量が低下することで中年期の体に影響を与えます。
成長期に骨を伸ばしたり筋肉を発達させたりする成長ホルモンは、10代に分泌のピークを迎え、それ以降の分泌量は年齢とともに低下します。
この成長ホルモンは、脂肪をエネルギーとして使えるように変換する働きを持っており、働きが低下すると脂肪が貯まり中年期特有にみられる太鼓腹の原因の一つを招きやすくなるんですよ。
男性ホルモンには何種類かの物質がありますが、その約95%がテストステロンです。テストステロンは筋肉量の増加や性欲・性衝動に寄与する他
精神面でもバイタリティに関わっていると言われています。
そんなテストステロンの分泌量は20歳から20代前半をピークに年々減少し、中年期に至ると集中力の低下ややる気のなさ、性機能障害などに影響するとされているのです。
男性更年期障害
従来、更年期障害は女性特有の病気と考えられていましたが、男性にも更年期障害は存在します。
男性更年期障害は40代以降にかかることが多く、多様な精神・心理症状や身体症状が見られる病気です。
男性更年期障害の主な原因は男性ホルモン量の低下ですが、心理的ストレスによる心身への影響も男性更年期障害に含まれます。
男性更年期障害のうち、男性ホルモン量の低下による様々な症状を「LOH症候群」と言い、中年期に特有の心理的ストレスによる精神症状を「ミドルエイジ・クライシス」と言います。
LOH症候群
加齢によって男性ホルモン(テストステロン)の分泌量が低下し、心身に様々な症状が見られるのがLOH症候群です。
LOH症候群:身体症状
[su_list icon=”icon: check”]- 骨密度の低下(骨折しやすくなる)
- 筋肉量と筋力の低下
- 疲労感
- 体脂肪(特に内臓脂肪)の増加
- 性欲の低下や勃起障害
- 動脈硬化や心血管疾患(狭心症、心筋梗塞など)
- メタボリックシンドローム
LOH症候群:精神的症状
[su_list icon=”icon: check”]- 記憶力や集中力の低下
- 認知力の低下
- 抑うつ
- 不安、苛立ち
ミドルエイジ・クライシス
中高年が陥る心理的な危機状態をミドルエイジ・クライシス(ミッドライフ・クライシス)と言います。
うつ病や不安障害と診断されるケースの他、職場への不適応や出社拒否、燃え尽き症候群、空の巣症候群など、バリエーションは多彩です。
また、こうした心理的な不安定さから、離職や離婚など、環境を大きく変える行動に出ることもあると言われます。
※ 燃え尽き症候群
一生懸命何かに取り組んでいた人が急にやる気をなくしてしまった状態のこと。
頑張りに対して達成感が得られず疲れ切ってしまった場合や、何かを成し遂げて疲労困憊した場合に陥る状態で、無力感や徒労感、無感動、虚脱、不眠、頭痛などの症状がある。
※ 空の巣症候群
子どもが成長して手を離れたため、それまで子育てに傾けていた熱意の行き場を見失って喪失感を抱いた状態。
孤独感や自信喪失、苛立ち、不安、食欲不振、不眠、頭痛、疲労感などの症状がある。
ミドルエイジ・クライシスの原因となる心理的ストレスは、中年期の特徴と一体と言えるものです。
キャリアの発展や変更・家族関係の変化・体の老化による不安や恐れ、それらを認めたくないという反発など、
中年期に起こりうる出来事によるストレスがミドルエイジ・クライシスの原因と言われています。
男性更年期障害の治療
男性更年期障害にはいくつかの治療法があり、自分にあった治療方法を試す必要があります。
【治療方法の種類】
- 男性ホルモン補充療法
- ED治療薬や漢方薬の投与
- 精神科などへの相談
- 生活リズムや生活習慣の改善
男性ホルモン補充療法
男性ホルモン補充療法は内科や泌尿器科などで実施されます。この対象となるのは、LOH症候群の症状があると診断された40歳以上の男性で、
血液検査によって男性ホルモン量が学会の定めた基準以下と確認された人です。
男性ホルモン薬には注射薬と内服薬、クリームがあります。
このうち最も広く用いられているのは、注射薬です。
2週間から4週間おきに、筋肉内に注射します。
男性ホルモン補充療法により、骨密度や筋肉量の増加、体脂肪の減少、抑うつや性機能の改善が見られたとする研究結果が報告されています。
ED治療薬や漢方薬の投与
性機能障害がある場合は、ED治療薬も選択肢の1つ。ED治療薬を使用するかどうかは、合併症などの健康状態や悩みの程度などを考慮して決められます。
「〇〇湯」「〇〇散」などと呼ばれる漢方薬は、複数の症状に効くブレンド薬で、疲れ・不眠・不安・苛立ちなどの慢性的な症状に対しては、漢方薬も治療の選択肢に含まれます。
精神科などへの相談
精神症状が強い場合には、精神科や神経科、心療内科を受診することも勧められます。
医師や臨床心理士などの専門家に相談することで、症状が落ち着く場合もあるのです。
また、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などでコントロールできる症状もあります。
生活リズムや生活習慣の改善
食事や睡眠などの生活リズムを整えることや、休暇や娯楽などでストレスをコントロールすることも、ホルモンバランスを安定させる役に立つと言われています。
ミドルエイジ・クライシスを乗り越えるためには、変化を受け入れること、変化に対応できるよう人生設計を見直すことも大切です。
変化と向き合って危機を乗り越えましょう。
変化と向き合って中年期を乗り越えましょう
職場でも家庭でも、身体面でも大きな変化を経験する中年期には、男性でも更年期障害になる可能性があります。
男性更年期障害の原因はストレスと男性ホルモン量の減少であり、多彩な症状を呈します。
薬物治療にはテストステロン補充療法や漢方などがあり、その他の対策として人生設計や生活リズムの調整などが挙げられます。
自分の心と体、生活環境に起こる変化を認めて向き合い、危機に陥ることなく中年期をつつがなく過ごしましょう。