今回の記事では、私が実際に経験した金融トラブルの話をさせて頂きます。
この話はマンガ「なにわ金融業」の実写版みたいな話で、10年(現在:2019年)以上前に元スマップの中居正広さんがドラマをやっていましたが、
現実は「あんな甘いものではありません。」
今回は私が経験したお金にまつわる「ちょっと怖い話」をしてみようと思います。
私が体験した、ヤ〇ザ5人に囲まれながら300万数えた話
私は、貸金業(ノンバンク)の店長を7年やっていた経験があります。
当時、私が勤務していた会社は個人にお金を貸す消費者金融(サラ金)ではなく、自営業者や中小企業の経営者に融資をする事業者金融という業種でした。
そんな時の債権回収時に経験した怖い話です。
ことの始まりは、依頼人:佐藤(仮名)の会社、AB建設(仮名)が不渡りを出したことでした。
※不渡りとは、(この場合ではAB建設)が発行していた約束手形(書いてある期日に銀行に持っていくとお金になる証書)がAB建設の銀行口座にお金がなく決済されなくなってしまうこと。
すべての金融機関は銀行も含め不渡りが起こると一括返済を求め回収業務に入る。
話の概要はこんな感じ
AB建設には保証人が3人ついて、合計900万円融資していた比較的大口のお客さんでした。
不渡り情報を掴んだ直後、私はすぐに保全状況を確認した。保証人の勤務先に在籍確認をし、佐藤(仮名)と保証人を含め改めて信用調査を行った。保証人の勤務先には変更がなく、退職している様子もない。一人頭300万なら払える金額だと判断したので、保証人に連絡すると2人についてはすぐに300万づつ支払ってくれる約束を取り付けた。
3人目の保証人A子が曲者だった。
3人目の保証人はA子(女性)。独身で33歳。父親が地場の大手ゼネコンの役員でA子はその子会社で働いている。年収は400万程度だったが、自宅の家は父親名義で担保無設定(抵当無し)評価金額約3500万。
兄は医者、従妹は上場会社勤務という定性の良さ。契約時の記録を見ると300万くらいならすぐに払えると言っていたらしいので、これもすぐに回収できるだろうとタカをくくっていた。
しかし、ここからが本当に大変だった…。
A子の彼氏が一緒に来店して大暴れ
本人に電話をしてAB建設が倒産して佐藤(仮名)とは連絡がつかないので、連帯保証した300万について相談したい旨を伝え、当社に来店の約束を取り付ける。
後日、A子が来店。しかし、その時に彼氏と名乗るMが一緒に話が聞きたいと来店してきた。Mは建設現場の作業着を着ていてガッチリした体つきの30歳くらいの男だった。当時の私より年上。この時点で少し嫌な予感がした。
私はA子には「佐藤とは連絡がつかないこと」「他の保証人2人は支払いが完了したこと」を伝え、後はA子だけだと伝えると、彼氏のMが彼女は騙されて契約しただけなので、保証を解除してほしいと言い出した。
女性の保証人で彼氏連れで来ると本当にロクなことがない。彼氏面して「俺が何とかしてやる!」とでもいったんだと思うが、そんなの許されるわけがない。
私は何度もこんな場面を経験しているので、「申し訳ないが契約として成立していることなので、そういう主張をされるのであれば当社に対して訴訟を起こすか、当社に支払いを済ませた後に佐藤に請求してほしい」と伝えた。
するとMは突然真っ赤になって私の胸ぐらをつかみ、「お前店長なんだろ!困ってる女を見てなんとも思わないのか!」って凄んできた。接客室で大声がするので社員が来てみたら店長が胸ぐら掴まれているので、社員は「警察呼びますよ!」って騒ぐし、A子が「やめて!」「やめて!」って泣き叫ぶし、本当にめんどくさいなぁと思いつつも私は「まあ、まあ」とMを諭した。
私の心の声は
「いや、俺、関係ないよね。困っているのは保証人になった自分の責任だろ。騙されたって、そんなはずないでしょ、こっちには契約時の記録も残ってるし・・・ 。」
って思ったが、彼氏の面子をつぶしてしまうと収集が付かなくなるので、こう切り返した。
「A子さんが保証している300万は支払いが滞っているので、約30万近い遅延損害金が発生しています。本来ならば遅延損害金についても支払いしてもらう必要がありますが、A子さんもお困りのようですし、Mさんの言い分も分かりますから、2週間以内にお支払いしていただければ利息は全て免除して元金のみの300万だけで済むようにします。」
それを聞いたMは、彼氏のメンツが保たれたのか、急に機嫌がよくなった。
しまいには、「話が分かる店長で助かる」とまで言い出してきた。
さっきまで、保証解除しろって言って、胸ぐら掴んでましたよね?
まあ、こちらとしては遅延損害金まで保証人に払ってもらおうとは最初から考えてなかったし、元金が回収できさえすれば満額回収で私の評価も上がるしで問題ないのだが、胸ぐらをつかまれイラっとしたので恩着せがまく言ってやった。
2週間後に支払いするからにA子の自宅に来てくれと言われ、その日は返ってもらった。
ただ、胸ぐらをつかまれたときに、Mの左手の薬指に指輪型の入れ墨が入っていたのが気になった。
300万を回収しに向かうが・・・。
約束の日になったので、A子に電話をして何時頃に伺う旨を伝えたところ、場所を変えたいといってきた。
あまり気乗りしなかったが、今月は回収成績が悪いので住所を聞いて承諾した。
片道1時間かけて現場に到着。現場は人気のない山奥。ちょっと薄気味悪い。
見た目は広めの一軒家だったが、駐車場には車が5台ほど停まっていた。来客中なのかな?と思いながら呼び鈴を鳴らして家に入るとそこはMの家だった。
Mの背中には鯉の絵が描いてあった
驚いたのはMが私を玄関まで迎えに来てくれたのだが、家は広くて向こうの廊下からMがTシャツを着て歩いてきた。と思ったらTシャツではなかった、Mが着ていたのはタンクトップだった。
遠目にTシャツに見えていたのは、入れ墨だ。オシャレなTATOOではない、正真正銘の入れ墨(牡丹の花?と鯉?が泳いでた)だ。
とたんに無防備に1人で来たことを後悔した。いま何かあったらかなりヤバいんじゃないか?と思いながらも、「こいつ、ワザとタンクトップで見せつけやがったな」と考えると腹が立ってきたので、精一杯強がってあいさつをした。
リビングに通され、A子とMに話を始めると、表の車の持ち主であろう人たち(明らかに見た目がアウトな人)が4人、こちらのやり取りを見ている。
その4人はどうしたんだと言わんばかりに私とA子とMの周りに集まり話し始めた。
話の節々に「AB建設」「佐藤(仮名)」許さねえ、絶対に捕まえて○○してやる!という物騒な言葉が聞こえてきたような、こなかったような気がするが、全部聞こえてないふりをした。
私は、4人はいないものとして話をしていたが、Mが300万の現金を出すと4人の目つきが変わった。
出された現金を一枚一枚数える姿を6人からじっと見られている・・・気が気じゃない!
4人のうちの一人が冗談で「一緒に数えてやろうか?」なんて言ってきたので、笑いながら「大丈夫です!」と強気で答えながらも内心は泣きそうだった。
こんな人気のないところで一人で300万持って、明らかにヤ〇ザの人たちに囲まれてる。お金を数えている間にどうやって無事に帰ろうかという方法ばかり考えてた。
お金を数え終わったので、領収書を渡し逃げ出すようにその場を去った。
生きた心地がしなかった恐怖のドライブ
取り合えず家を出るまでは何もしてこないだろうと思い、車に乗って運転しながらすぐに会社に電話した。電話口に出た部下に、もしかしたら襲われるかもしれないから、20分後に○○のセブンイレブンまで車できて入り口付近で待っててほしいと伝える。
「店長、何かあったんですか?」と聞くので、それまでの経緯を簡単に説明して、迎えに来るように指示した。
それから、電話を切り終わったらすぐに車のスピードを上げた。さっきから後ろからピッタリとついてくる車がある。Mの家に停まっていた車の一つだ。暗くて分かりにくかったが、特徴のある車なのですぐに分かった。
追いかけてきてるのか偶然なのかは分からないが言いようのない恐怖がどんどん湧いてくる。額から汗が出てくるし、ハンドルを握る手の平からも汗が出ているのが分かる。冷や汗というものを生まれて初めて体験した。
とにかくあのセブンイレブンまで行けば何とかなる!と自分に言い聞かせながら車を飛ばす。
30分ほど走ってセブンイレブンに到着すると後ろの車も一緒にセブンイレブンに入ってきた。
「もう、勘弁してくれ」と思いながら部下の車を探す。部下は先に着いて待っててくれた。
部下の人がよさそうな顔を見ると泣き出しそうになった。一人じゃないとこんなに安心できるんだと思いながら、車2台並んで会社に帰った。
私が誰かと一緒だということが確認できたからだろうか、後ろの車はもうつけてこなかった。
それでも、怖いので会社に戻ったらすぐに現金を金庫に入れ、窓も全部閉め、戸締りとセコムを厳重に確認しつつ帰宅した。
いま思うと、あの時怖くなって部下に迎えに来てもらって本当に良かったと思っています。300万円一人で持ってあのまま帰っていたら何が起きていたか分かりません。迎えに来てくれた部下に感謝です。
また、あとで聞いた話ですが左手の薬指に指輪型のタトウーをする人は諸説ありますが、少年院や刑務所に行った人のようです。
佐藤(仮名)がどうなったかは怖くて知らべていません。
15年前(現在:2019年)のちょっと怖かった話です。